生活体験が豊かな子ども

生活体験が豊かな子ども

■調査からもわかる体験の重要さ

勉強ができる子に関して三つめにあげたいのは、生活体験が豊富なことです。

子どもにとって体験がいかに重要か、まず、それを物語る一つの事実から紹介しましょう。

いまから三十年ほど前ですが、豊中のとある塾で、ある調査がおこなわれました。
知能指数が同じで、成績がオール5の子どもと、オール1の子どもを取り上げて、なぜ同じ知能指数なのに学力に差が出るのかを調べたのです。

もちろん、家庭環境も千差万別ですから、一概には言えません。一概には言えませんが、共通する要素が一つ浮かび上がってきました。
一つは、前述したテレビの時間です。

オール5の子は、「テレビを見る時間が少ない」のです。

では、もう一つは何か。

オール5の子は、オール1の子に比べて、「よくお手伝いをしている」ということでした。

お手伝いをよくすると、なぜ学力が伸びるのか―

家の手伝いができているというのは、その家庭の子育てにポリシーがあること、そして躾が機能していることを意味します。これも、前述したように伸びる子の大事な条件ですが、実は「よくお手伝いをする」ということは、生活体験が豊富であることを物語っているのです。

たとえば、算数を例にとりましょう。

算数のスタートになるのは、数というものがどういうものであるかを把握することです。これがわかっていないと、算数の勉強は始まりません。

子どもに数の概念を教えていくには、まず身の回りのものから始めます。アメとかコップとかお皿です。

それから、タイルやおはじきなど半抽象物に移ります。

最後が、抽象物である数字です。豊中の塾でも教えています。

この「具体物―半抽象物―抽象物」という過程をきっちり踏んでいないと、子どもは数という概念がつかめないのです。

よくお手伝いをする子は、具体物に慣れています。たとえば、テーブルセッティングの手伝いをしていれば、家族分のお皿を並べたり、紅茶のお皿にスプーンを添えるといったことをしているはずです。数えることのベースになる「一対一対応」を自然に身につけていますから、半抽象物、そして抽象物である数字もスムーズに頭に入ってきます。

また、小学生になって買い物に行くお手伝いをすれば、お金の計算が出てきます。商店とスーパーマーケットは、どこがどう違うのか、体験的に学ぶことができます。

生活体験が豊富な子ほど、「勉強ができる」のです。

生活体験が豊かな子ども

■「百間は一見にしかず」

家庭でお手伝いをする子は、応用問題を始め、さまざまな問題を解いていく力が出てきます。どういう手順でやればいいのか、ものごとの段取りを身につけることもできるようになります。問題を解決していく力がついてくるのです。

しかし、最近の子どもたちは、「お手伝いをする」ことが少なくなってきました。塾に行く機会が増えています。

小学校の低学年は、理科と社会がなくなって「生活科」になっています。

「生活科」というのは、子どもの「体験を重視する」ところから生まれました。いまの子どもたちに体験が不足しているからこそ、「生活科」が設置されたのです。

子どもたちにさまざまな体験をさせることが、大きく問われているともいえるでしょう。

たとえば理科や社会の学習は、とりわけ多くの「体験」をもとに教材が配列されています。

豊中の塾でも子供に先生がたずねます。「お風呂に入るとき、湯かげんはどうだい?」

子どもは、答えます。

「先生、お風呂の上のほうは熱いくらいでね、そっと入るじゃない。でも、お風呂の下のほうは水みたいに冷たかったよ」

誰でも体験していることです。

こんな体験を思い出させながら、塾の講師は「対流」の学習を始めるのです。

体験というのは、その中に何十、何百という生きた情報が詰まっているものです。

「横浜」の絵はがきを何枚持っていようと、一度横浜に行ったことがある子のほうがたくさんの情報を得ることができます。

身をもって体験したことなら、空気や匂い、温度、人の表情やそこに醸し出される雰囲気までわかります。

「百聞は一見にしかず」なのです。

前回の記事はコチラ→【テレビゲーム等と縁が遠い子ども