■やればできても、続けることができなければ意味がない
小学校のときは成績が悪くても、中学になって伸びる子がいます。また、その逆のケースもあります。私が教える塾でもよくあるケースです。
小学校の成績がすべてではありませんから、むろん、長い目で見ることはたいせつです。
長い目で見ることはたいせつですが、「そのうち、なんとかなるだろう」と思って何もしないのでしたら、ちょっと問題です。
「そのうち、なんとかなるだろう」というのは、「人間、生き方は人さまざまにある」「長い人生だから、人はいつどう変わるかわからない」という意味でなら同意できます。しかし、「そのうち、なんとかなる」となりゆきまかせにしていたら、現実には「なんとかならない」場合が圧倒的に多いのです。
なんとかなったケースもあるではないか、と思われるかもしれません。
小学校のときは最下位に近い成績でも、中学や高校で実力を発揮したケースです。こういうケースは決して珍しいことではないのも事実です。
「なんとかなる子」は、もちろんいます。もちろんいますが、「なんとかならない子」のほうが断然多いのです。長年塾で見ていて思います。
では、「なんとかなる」のは、なぜなのか生活体験が豊富である、テストによって測ることができない力を持っていた等々の理由は、もちろん関係します。しかし、私の経験からいって、これ以外にも「なんとかなる子」には明らかな特徴があるように思えます。
「なんとかなる子」は、持続的な努力ができる子です。
逆に「なんとかならない子」は、持続することが苦手なのです。塾の講師や親の注意、励ましがあると、ときには集中して勉強します。その結果、いい点をとることもあります。しかし、それが長くは続きません。しばらくすると、元に戻ってしまいます。「やればできる」のに、続けることができないのです。
大人は「やればできる」ことを過大評価し、「続けてできない」ことを過小評価しがちです。「やればできるのだから、そのうちなんとかなるだろう」と考えるのです。ところが「続けてできない」――持続力がないので、何をやっても長続きしません。「なんともならない」ことになりがちなのです。
持続力を育てていくことは、極めて重要なことであり、伸びていくうえで不可欠な能力なのです。
ロサンゼルス・オリンピックの男子体操で金メダルを取った具志堅幸司氏は、「自分には体操の素質はなかったけれど、目標を決めたら最後までやる意欲はあった」と語りました。
「継続は力なり」と言います。
持続する力、努力し続ける能力は、他のどんな才能にもまさる大きな力だといえるでしょう。
しかも、この才能は、先天的なものではありません。生活の中で獲得されていく後天的なものです。誰もが身につけることができるものです。
「持続して努力する」力をつけることは、学校や塾と家庭における教育のたいせつな内容だと思います。
■「自分の机に向かう習慣をつける」ことの勧め
持続する力の有無をどう判断するのか。
私は、子どもたちに次のように語っています。
「その人間の努力の持続度は、あることを過去百日間にやった回数で示される」
水泳の練習をするでも、漢字の練習をするでも、あるいは日記をつける、お手伝いをするでもいいでしょう。吹田の塾ではアドバイスしています。
百日間続けてみて、何日間できたかでおおよそのことは判断できます。
合計して、九十日以上できれば優秀です。たとえ現在の成績がどれほど悪くても心配はいりません。六十日以下なら、要注意です。「なんとかならない子」ほど、日数が少なくなります。
では、持続力をつけるには、どうしたらいいか。
一つは、約束したことを守らせることを心がけるといいと思います。「食後、自分の食器を台所に持っていく」でも、「夜寝る前に明日の時間割の準備をする」(これは基本的なことです)でもかまいません。約束したら、それを守らせるのです。ただし、「これこれをやりなさい」と言いっ放しではいけません。子どもの言動に目配りし、最後までフォローして、「よくできた」などと声をかけることが大事です。そのときどきにあった言葉を――それも否定的な言葉でなく、肯定的な言葉をかけることです。
そうすれば、「続ける」ことができるようになります。
それと同時に、ぜひとも習慣づけていただきたいのが「机の前に座る習慣」です。
「机の前に座る習慣」ができれば、「息長く一定の努力をしていく」力がついたと言っていいくらいなのです。
決めた時間内に決めた時間だけ、机の前に座る習慣をつけることです。
初めのうちは、マンガを読んでいても、絵を描いてもかまいません。
とにかく、決まった時間に机の前に座る習慣のです。
この習慣がある子とない子では、将来、大きな開きが出てきます。
持続力がつくことはもちろんですし、一○○点満点に換算すれば、それだけで一○点、二○点の力があると思います。
机に向かう習慣は、高校になってからでは、まずつきません。
遅くとも中学までにつけることが必要で、理想的には小学校の時期に身につけさせることが大事なのです。塾でも宿題を出して時間を与えています。
机に座る時間は、毎日一定した時間帯にしておくほうが望ましいでしょう。
学校から帰ってすぐというのは子ども同士の遊びの約束などがあって無理だと思いますから、夕食前が適当だと思います。夕食の時間を決め、生活のリズムをつくってやると、習慣がつきやすいと思います。
そうはいっても、習慣ですから、一カ月、二カ月ではつきません。少なくとも一年、二年はかかるでしょう。
自分の机に一定の時間座るようになったら、お母さんも子どもと一緒に机に向かって、本を読むのを聞いてあげたりなさるといいのです。
そして、「せっかく机に向かっているのだから、この時間に宿題をしてしまおうね」などと少しずつ勉強に振り向けるようにします。
勉強したときは、ほめることも大事です。
机の前に座る時間は、学年に十分をかけた時間が目安になります。
ただし、高学年の子どもでも、これから机の前に座る習慣をつけようというのでしたら、いきなり四十分、五十分という長時間から始めずに、十分、二十分くらいからスタートするほうがやりやすいと思います。
前回の記事はコチラ→【「励まし、ほめること」が伸びる子への近道】