論理力を向上させる「一人討論」
ディベートとは普通、一つの事象について「賛成派・反対派」に別れ、論理的な理由や原因を列挙しながらそれぞれの主張を展開していくというものです。論理力を養うためにディベートは大変効果ある方法ですが、一緒にやる人がいなければ、一人で行うこともできます。その場合先程述べた「自問自答」をさらに進めたものだと受け止めてやってみましょう。まずはこの1人ディベートについても「テーマ」を決めます。例えば「憲法改正に賛成か反対か?」について進めましょう。テーマを決定したらまずは賛成派側に立って何故賛成するかその理由を考えます。この時
【憲法改正・賛成派の理由】
1.現行の日本国憲法は現代社会の現状に合っていない
2.そもそもGHQから押し付けられた憲法である
などと考えたら、次は反対派側に立って先程の2つの「賛成派の理由」への反論を考えてみましょう。
【反対派の反論】
1.に対して・・・「現在社会の現状」とは何を示すのか具体的ではない。もしその部分を認めたとしても、そもそも憲法とは国を誤った方向性に導かないための「根本規範」であるのだから、現在の状況に憲法を合わせるのでは意味がない。
2.に対して・・・押し付けられた憲法であっても「良いものであればいいのだ」
押し付けられたからといって全て否定するなら、親が子供に行う教育も然りということか。
この工程を一通りし終えたら、次は反対に反対派の理由から先に考えていきます。
【憲法改正・反対派の理由】
現行の日本国憲法は世界の中でも稀な平和憲法だからそれを改正することは日本を
軍事国家へと誘導してしまう危険性がある。
【賛成派の反論】
平和憲法があるだけで他所の国から侵略、攻撃を受けないという保証は全くない。
それなら、他国の侵略から日本を守るための最小限の軍事力は不可欠で「日本国憲法の改正が日本を軍事国家へと誘導する」という訴えはあまりにも極端である。
と言った具合に、自分の中で「賛成派だったらどのような根拠を主張するか」「反対派だったらどう理由づけるか」を考え、さらにそれぞれの根拠についてどのような反論が起こり得るかを検討するのです。これが「一人ディベート」です。じれが普段の生活の中でしょっちゅう出来るようになれば、あなたの論理力は高度だと言っても差し支えないでしょう。
塾での勉強も自分の頭で考えよう
自分で考えなければ論理力は自分のものにならない
私はどうして「自問自答」や「一人ディベート」をご案内してきたのでしょうか。それは
論理力というものは、自分の頭でしっかり考えなければ決して身につかない能力だからで
す。今「論理力」や「論理学」について書かれている書籍の多くは、色々な事例を挙げて
は「論理的に考えると〇〇の根拠によって△△の結論になる」という説明をしているよう
です。しかし、このような「作られたシナリオ」を見ていても、本当の意味の論理力は全
く備わりません。考える経路を辿るヒントにはなるでしょうが、自らの脳内を「論理的」
にするにはそれでは全く足りないのです。常にテーマを見つけては自分の頭の中で訓練
する癖をつけるしかないのです。そういった観点で、紹介した2つの形式訓練は簡単なも
のからでも得意な分野からでもよいので是非楽しみながら実行していただきたいと思いま
す。