できるだけ多くの学科を一時間ずつ組み合わせる
しかし、そうは言っても、どのような学科や内容でも隙間時間でする勉強は、決して主たるものにはなりません。
勉強というのはある一定時間、断続的に行わなければならないのはもちろんのことで、隙間時間に学べることは限定的です。
従って、勉強を続行する際にはなるべく質の異なる分野や学科を組み合わせてする方が一つの学科を断続的に行うよりも効果があります。
先程述べた「前門の虎」と「後門の狼」は同種の暗記を妨害するのが性質がありますから一つの学科を4時間も5時間も続けていたら覚えたことは次々失われていってしまいます。
例えば「社会の暗記物を1時間したら今度は数学を1時間」とか「民法のテキストを1時間読んだら、刑法の設問を1時間解く」というように、
性質が違ういくつもの分野や学科をなるべく組み合わせて学習をするのです。
その方が同じ学科を長時間続けて勉強するよりもずっと効果的です。
しかしそれでも、どうしても同じ学科を長い時間しなければならないこともあります。
そんな時は合間に「リフレッシュタイム」と設けて、算数の単純計算(百マス計算でも構いません)などをやってみるのもよいでしょう。
また人が集中できる時間には限界があるので(一般的には45分とされていますが、相当個人差があるようです)適度に5分から10分くらい休息を挟むことが重要です。
休憩の最後(つまり勉強を再び始める直前)には3分間だけ算数の計算問題をするなど頭の準備体操をするのもいいでしょう。
「それでも忘れてしまうとき」のために
さて様々な「記憶を定着させるやり方」について説明してきましたが、それでは私の勧めるやり方に従えば、記憶はしっかりと定着するのでしょうか。
残念なことにそうではないのです。「人はそれでも忘れる動物なのです」と本当のことを言うしかありません。
ここが「記憶を長期の記憶に変えるまで」の難しいところです。
記憶したことが、一旦長期記憶となってしまえば、相当な年月、その知識を使用していなくても意外にスラスラと出てくるようになります。
そうなればしめたものです。
例えば「織田信長が暗殺されたのはどこ?」と問われれば、たくさんの日本人が「本能寺」と解答するでしょう。
それは「信長が本能寺で暗殺された」ということが、たくさんの人々の脳内に長期記憶となっているからです。
それではどうすれば記憶したことを「長期記憶」として頭の中に定着させることが出来るのでしょうか?これに対する回答は「実際に何回も使用するしかない」と私は思っています、例えばサラリーマンであれば、会計や財務分析を勉強したらあとは学習したことをどんどん実践していきましょう。
そして「実践」するための一番有効な道具は問題集なのです。
問題集をこなすことは記憶を定着させるという面で極めて効果があるのです。
考えもしなかった方面から出題された設問を考え、分からなければ答を見るという作業だけでもよいのです。
(当然、基本書に戻ることができるなら戻ってみるのが基本です)
もし半分も解答できなくても、落ち込まないで次々挑戦していきましょう。
それだけでも勉強したことを、お経を読むように単調に復唱するよりずっと頭に残ります。
しかも応用力も身につくのでこのやり方は是非お勧めです。
シュリーマンが十数か国語を修得した学習法
最後に、ここでお勧めした学習法を試してみてもそれほど暗記ができなかったという人や初めから「暗記する事」の量の多さに恐れをなしている人のために取って置きの良い方法をご案内しておきます。それは「人は暗記を続けているうちに、記憶力はどんどん高まっていく」ということです。
健全な頭脳を持っている方であれば必ずそうです。
しかも「記憶力が良くなる」ことについて、年齢は一切関係ないのです。
暗記作業を続けているうちに脳内の神経細胞
であるニューロンの数が、年齢に関わらず増加します。
そしてニューロンの増加とともに記憶力は一気に上がるのです。
具体的には初めは1日に10個しか暗記できなかった単語が、暗記作業を始めてひと月後にはざっと50個を記憶できるようになったという事例がよくあるのです。
トロイ遺跡を発掘したシュリーマンは、語学が得意だということでも有名で、短期間に一つの言語を修得し、結果的に十数か国語を使えるようになった人物です。
そんなシュリーマンの語学の勉強法はある種の「丸暗記法」でしたが、彼は「自分は暗記が苦手な方だった」と言っています。
しかし「丸暗記」を続けていくうちに暗記力が驚くほど高まり、簡単な文章であれば、2回か3回読んだだけで記憶できるようになったそうです。
(シュリーマンの著書『古代への情熱』による)
しかもかなりの高齢になってからのことなのです。
私自身は司法試験受験の際定義などを「丸暗記」しているうちにどんどん暗記力が身についていくのを実感しました。
恐がることは何もありません。暗記作業には「逓増性」があります。
つまり「やればやるほどどんどん効果が上がる」ということです。
初めは暗記することが山積みのように思えても、それは次第に加速度的に切り崩していくことが出来るものなのです。
途中で投げ出してしまわない限り・・・。
だからこそ吹田の塾で教えていることは忘れないように、暗記できるように教えています。
その方法まで教えるのが私のモットーです。